月より星より キミに誓うよ

   “まどろむ中で触れる愛しさ”


東京を含む関東地方では特に
ああまで暑いばかりだった今年の夏が、
八月をあと少し残すばかりとなった途端に、
いきなりの急転直下で涼しくなった。
立秋を迎えても盆を過ぎても 例年と同じで、
秋と言いつつ、そんなの暦の上でばかりなりだったはずが。
蝉の声が場違いに聞こえるほどの朝晩の涼しさに訪のわれ、
何でだろ何だろこれと、
助かりはしたけれど ちょっぴり及び腰になっておれば、

 『物凄い降りようだったねぇ。』
 『うん。私なんて故郷の雨季を思い出したよ。』

西日本で大暴れしたのとの帳尻合わせかと思えたほどに、
バケツやタライをありったけ引っ繰り返したような豪雨も襲い。
日本の上空へ、
この時期にはあり得ないほどの寒気が大陸から南下して来たらしく。
地上はまだまだ夏の名残りの気温と湿度だったものだから、
あっと言う間に、大きな積乱雲が、しかも次々と発生してのこと、
北海道や東北、東日本や近畿の一部で、凄まじいまでの雷雨が大暴れ。
史上最高の降雨量を記録したよという通知よろしく、
テレビ画面へも警戒警報が流れまくりとなっていて。
地下街や高架下の道が冠水し、
エンジンルームに浸水したのか 何台もの車が立ち往生し、
下水の処理能力以上の水量だったか、マンホールの蓋が浮き上がりと、
都心は案外と雪や雨には打たれ弱いのが、またぞろ晒された九月の初めで。

 『でもねぇ、このっくらいというのは、
  例年だって 台風や先触れの大雨が降る時期だしねぇ。』

松田さんが言うには、
九月のお彼岸の前っていうと、
いつだって大雨が一回は降ってた覚えがあるそうで。
そういうのまでもが紛れ込んでしまうほど、
ここのところは不意打ちっぽい急変が多いということなのかも知れぬ。
いよいよの亜熱帯化でしょうか、ニッポン。(おいおい)







  「………。」


ぽかりと呆気なく目が覚めて、
ぼんやりとしていた視野の中、
妙に鮮やかな色彩が見て取れたのは、
室内が既に黎明の明るさに満たされていたからで。
ああ、雨は止んだままらしいな、
蝉の声も聞こえないので、陽はまだ顔を出してはないのかも。
カーテンをきっちりと引いていなかったのは、
涼しくなったとはいえ、それならそれで夜風の心地よさについ惹かれ、
薄くではあったが窓を開けていたからで。
となると、寝しなはともかく、
明け方はともすりゃ肌寒い日もあったりするのだが。

 「………あ。////////」

どうしてこんなにも目の前に、アネモネの花があるのかなぁと思い、
それが、自分たちがごみ箱にしている、アルミの筒バケツだと気がついて。
それならならで、何でまた こうまで目前にあるのかな、
布団を敷くときにあれこれ移動させる中、
これもまた いつもはもっと壁に寄せてた筈で…と、
順を追って辿ることで、止まっていた思考が回り始めるにつれ。
ごみ箱の居処の不思議のみならず、
少しは寒いはずが寒くなく、
互いの体温が均されているほどに
誰かさんの懐ろに くるみ込まれていることとか、
それらが何故なのかという答え、
昨夜の終わりへ するすると記憶が逆上ってゆき、

 「…もしかしてブッダ、ごみ箱との恋に落ちたのかな。」
 「な…っ☆」

不意打ちもいいところ、頭上から降って来たそんな声へ、
間合いもそうだが、言いようもとんでもないことと、
さすがにもう判別出来るまでになっていた如来様、

 「な、何を言い出すかな、キミはもう。」
 「だってサ。」

さすがにタオルケットでは心許ないからと、
薄い夏掛けへクラスチェンジしていた掛け布団が二人分、
微妙な角度と比率で重なり合ってる間(あわ)いの下にて。
上になってる側だけ腕を回し、
肩を抱いてくれての掻い込まれていたお相手を、
微妙な言いようへの反駁として見上げたものの、

 「〜〜〜。//////」

そちらはまだ寝ぼけ半分か表情も薄く、
アンニュイなまでの無愛想さが、
見ようによっては やや真顔なの、
容赦も躊躇もなく真っ直ぐ向けて来られたのへ
こちらも直球でドキリと 心ときめくブッダだったりし。

 “ううう。////////”

切れ長の双眸がやや伏せられていて、
睫毛の翳りが滲んでのこと、深色を帯びた玻璃の眸が綺麗だとか。
真っ直ぐ結ばれた口許が冷酷なまでの冴えを載せていて雄々しいとか、
そんな印象を拾ったそのまま、胸元がきゅうと引き絞られてしまい。
なんて他愛ない自分かと、バカバカわたしの馬鹿と思う理性(?)と、
ああでもなんて絶妙なキメ顔かと、
ついついうっとりしてしまった感性とが、
頭の中と胸の内とで
我が先だとの主張権を争ってのこと グルグルしてしまっていれば、

 「ぶっだ?」

随分と機敏に顔を上げたのに、
そのまま、態度も表情も固まってしまった伴侶様なのへ、
イエスの側でも さすがに“おやや”と不審を感じたか。
ややぼやけていた表情に冴えがわずかほど滲み、
どうしたのと案じる声を掛けるまでの 判別つきで意識が目覚めて。

 いやあの、だって。
 イエスが妙なこと訊くんだもん。

 だってだって、
 ブッダってば、ごみ箱見つめたまま固まってるんだもん。

朝も早よから、ささやかなことで“いやんもうvv”と睦み合ってる、
それはもうもう幸せそうな 神と仏である辺り。
お天気はさすがに管轄外らしいですが、
蕾がつき始めている金木犀の枝へ
ヤマモモやサクランボウまで実り始めているくらいなので。
今日も今日とて、幸せな立川になりそうではあるらしいです。

  そしてそして、

なんでまた、ごみ箱なんぞを
滅多に見ない角度から見たのでそれと気づくのに間が要ったとはいえ、
気がついても なおじっとじっと、
赤くなって見つめ続けてしまったブッダだったのかと言えば、

 “……………。//////////”

はは〜〜んvv 昨夜まで逆上る訳ですね、色々とvv







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  *あまりに短い導入ですいません。
   続きもがんばって書いてます。
   時間が欲しいぞ、ひ〜ん。

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